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パリ・レピュブリック広場に集うデモ参加者(2019年4月13日撮影、Getty Images)

フランスで5カ月近くにわたって繰り広げられている社会運動は、多くの意味で前例のないものだ。

定期的に(毎週)行われていること、長期に及んでいること、暴力的であることもそうだが、労働組合や政党その他の団体といった既存の組織の枠組みを超えて行われていること、伝統的な右派と左派の分類につながる社会経済的カテゴリーの違いが反映されていないことからも、そう言うことができる。

エマニュエル・マクロン大統領は、昨年11月に行われた最初の抗議行動のきっかけになった燃料価格の値上げを中止したほか、購買力を引き上げるための措置を講じると発表。「国民大討論」も始めたが、抗議行動は続いている。

フランス政府はなぜ、この「黄色いベスト運動」を終わらせることができないのだろうか?

マクロンが「堪忍袋の緒」を切った

抗議行動のきっかけを作ったのは、現政権だ。だが、根本的な原因となる問題は、その発足よりずっと前から存在していた。過去の政策(炭素税と社会保障目的税の引き上げや富裕税の廃止など)から直接的な影響を受けてきたデモ参加者たちにとって、就任から6カ月の間にマクロンが実施した政策は、我慢の限界を超える引き金となった。

ある調査結果によれば、多様な背景を持つデモ参加者たちを結び付けている要因の一つには、「人生に対する満足度が非常に低い」ことがあるという。「自分は不幸だ」という感覚は、教育や仕事、収入の水準と密接に関連している。ただし、そう感じているのは必ずしも貧困層だけではない。

それどころか、比較的大きな不満を抱えているのは、国民の中でも重要な位置を占める低・中所得の境界に当たる人たちだ。彼らの多くは失業者ではなく、生活保護を受けるほど低所得でもなく、フランスの寛大な社会保障制度の恩恵を受けることがない。

さらに、多くが過去数十年にわたって国のサービスが縮小され、「砂漠化」してきた地域に暮らしている。病院や学校、郵便局などの閉鎖は、農村地域にとっての大きな問題だ。

また、世論調査によると、黄色いベスト運動を支持する人たちは、政府やその他の国民全般に対する信頼感が特に低い。67%が、「政治家の大半は富裕層と権力者のことしか気にかけていない」と回答。79%は「政府を全く信頼していない」、61%は「欧州連合を信頼していない」と答えている。

黄色いベスト運動は、2017年に行われた大統領選の決選投票で初めて明らかになったフランスの政治危機が、いまだに続いていることを示している。同国の政治を特徴づけてきた伝統的な左派と右派の分類に代わって、人々は幸福感や体制への信頼感、世界に対する寛容さなどに基づいて対立するようになっている(黄色いベスト運動の支持者の83%は、グローバル化に反対している)。

これまでその重要性が過小評価されてきたこれらの基準は、何年も、場合によっては何十年も前から、大きな力を持っていた。黄色いベスト運動が左派と右派どちらの考えも反映していないということは、政府が問題の解決に向けて提示するいずれの措置にも、彼らが合意しないことを意味している。

これが、フランス政府が黄色いベスト運動を完全に収束させることができない理由だ。デモ参加者らが不幸だと感じていることや体制に対して持つ深い不信感の原因となった構造的な問題に、政府が短期間のうちに対応することはできないだろう。

編集=木内涼子

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