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左から美術家の田中英行、kumagusuku代表の矢津吉隆、MAGASINN KYOTO編集長の岩崎達也

ビジネスに「アート思考」を取り入れることへの関心がこの1年で急速に高まりつつある。山口周氏による「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか」を筆頭にビジネス×アート切り口の書籍やコンテンツが次々と話題となっているが、その背景にはこれまでビジネスを拡大するために必要だった論理的思考を元にしたマーケティング手法の同質化・閉塞感がある。

そんな中、京都でkumagusukuというアートホステルを経営する、美術家の矢津吉隆が発起人となり、仕事に生かせる”アート思考"を学ぶ社会人向けの私塾「アート × ワーク塾」がスタートした。

京都で生まれた「アート思考」を学ぶ私塾

クラウドファンディングのReadyforで販売した15万円の先行受講チケットはすでに完売しており、今後の一般募集を待つ人気ぶり。小説家・いしいしんじやデザイナーの山下陽光、写真家の石川直樹、セルフビルド建築で有名な建築家の岡啓輔などを講師として迎える予定だ。「京都場」という町家をリノベーションしたギャラリーが受講会場である。

「デザイン思考とアート思考が混同されたり、言葉だけが一人歩きしている部分もあり、ビジネスに結びつけられるような『アート思考』を特に『アート × ワーク思考』と名付けることにした。『アート × ワーク思考』によってビジネスマンがアーティストと共犯関係を作れれば、アーティストの活躍の場も増えると考えた」と矢津。これまでの経験から見えてきた「アート × ワーク思考」を言語化。

「自分の内側から引き出したものを大切にする」「言葉にできない感覚を信じる」「偶然性を積極的に活かす」「意味は無くても理由はある」「価値は自分で決める」「自分の中の未知に出会う」「アートはあなたの中にある」という7つのキーワードをかかげた。これまでの論理的な思考で積み上げられるマーケティングとは真逆にあるような言葉ばかりが並ぶ。

「アート × ワーク」という視点を見出した3人の邂逅

Art
京都にある「泊まれる美術館」、kumagusuku(撮影:表恒匡)

「アート × ワーク塾」の中心メンバーは3人。前述の矢津と、矢津の京都市立芸術大学時代の同級生でもある美術家の田中英行、そして、リクルートコミュニケーションズや楽天を経て京都に“泊まれる雑誌”MAGASINN KYOTOを開業した岩崎達也だ。

私塾開講にたどり着くまでの話は大学時代にさかのぼる。矢津と田中は美術家として「Antenna」というアーティストグループを立ち上げ、活動していた。当時は地域系アートプロジェクトが増えた時代で、土地のコンテクストを汲み取った作品を生み出すために多大な労力を割いても、なかなか人々に届かない。特に文化事業としてのアートは、ボランティアとしての参加を求められることも多く、展示会を開催しても、予算もなく、来場者も鑑賞するだけで終わってしまうことにジレンマを感じていたという。田中はその後、海外に活動の場を求めてベルリンやバーゼルを中心にヨーロッパを転々とするが、貴族社会を背景とするヨーロッパのアートシーンに面白さを見出せず、帰国してしまう。

文・写真=角田貴広

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