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第三に、軽減税率の導入で、失われる税収を取り戻すためには、将来より大きな消費税率の引き上げが必要になる。食料品には確かに軽減税率が適用されるものの、それ以外の消費財にはより高い税率が適用される。

第四に、軽減税率適用の「食品」の線引きが難しいということがある。外食やアルコール類には適用除外、ということが決まっているが、食品と外食の区別は難しい。テイクアウトは、8%の軽減税率適用だが、イートインの場合には外食なので10%の標準税率が適用である。これは販売店員がいちいち、「テイクアウトですか、店内でお召し上がりですか」と確認する必要が出てくる。

さらにそもそも「食品」の定義も難しい場合がある。刺身はもちろん軽減税率適用だが、水槽に入った魚はどうだろう。観賞用熱帯魚は食品ではないので10%だが、食品となるドジョウは8%であるが、線引きが難しい魚が登場することも予想される。さらに食品にまぶされている金箔はどうだろう? 贈答用のメロンが桐の箱に入って一体として売られる場合はどうか。個人や会社のパーティーに出張料理するケータリングは軽減税率か標準税率か。このような微妙なケースについて財務省は、Q&Aを作成しているが、102項目に上っている。

このように軽減税率は、導入の目的のためにはきわめて非効率的な制度であり、その実施のための店員や課税当局にかかる実現コストは非常に高い。いまからでも遅くはない、軽減税率はやめよう。


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学特別教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002年〜14年東京大学教授。近著に『公共政策入門─ミクロ経済学的アプローチ』(日本評論社)。

編集=Forbes JAPAN 編集部

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