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日本人が知らないエストニアのいま

e-Residencyチーム・チーフエバンジェリスト アダム

近年、電子国家として世界に名を馳せているエストニア。その名を世界に轟かせた大きなきっかけが、世界初の電子国民プログラム 『e-Residency』だ。今回は、前回に引き続きe-Residencyチーム・チーフエバンジェリストのアダム氏を単独インタビュー。世界中を魅了している同プログラムのマーケティング戦略に迫る。

国家レベルのインフルエンサーマーケティング

「安倍首相がエストニアの電子国民に──」

2018年1月にエストニアを訪問した安倍首相は、エストニアのラタス首相からe-Residencyカードを贈られた。この会談の様子は日本の報道機関を含め、世界的に大々的に報道されたため、記憶にある方も少なくないのではないだろうか。安倍首相以外にも、これまでエストニア政府はビル・ゲイツ氏、ローマ教皇、メルケル首相などのべ約50人以上の国際要人に、e-Residencyカードを贈呈している。

「元々は、2014年に当時のアメリカ大統領・オバマ氏がエストニアに訪れた際、エストニアのIDカードを模したようなものを贈ったことがきっかけだった」(アダム)

しかし、国家の要人たちがe-Residencyを活用してビジネスを興すことは考えられにくく、法人税などの税収も発生しないことを鑑みると、e-Residencyにとって直接的なメリットはないのではないだろうか。

「まずはエストニア政府からのギフトとしてe-Residencyカードが機能していることが一つ。実際にエストニアの電子政府システムを体験できるため、みんな喜んで受け取ってくれるんだ。加えて、e-Residencyカードを贈呈するシーンは会談の象徴的なシーンとしてメディアが取り上げてくれる。元々そういった意図なかったのだけど、結果的に認知度の向上には繋がっているね」とアダムは言う。

これは、まさしく国家レベルでの「インフルエンサーマーケティング」と表現して良いだろう。

1:nからn:nへ キーワードは「誠実さ」

同プログラムを運営するe-Residencyチームは、政府組織でありながら民間企業の出身者が大半を占める。「政府そのものがスタートアップ」と称されるのも、その所以だろう。したがってそのマーケティング戦略も、民間企業のようなアクティブな形式を採用している。

リリース直後は、e-Residencyそのものの解説記事や、HowTo記事を多くリリースしていたというアダム。現在は、国内外のPR会社とも連携しながら、世界中をカバーできるようなプロモーションを展開しているという。

「ぼくらは特定のターゲットエリアを敢えて設けず、フレキシブルな立場を取りたいと思っている。ニーズが高い地域があったら、そのエリアに全力投球するのさ。ブレグジットの影響があるイギリスも、その可能性があるエリアの一つだね」

そんな彼らのマーケティング戦略におけるキーワードは、「誠実さ」だという。

「フェイスブックに非公式のe-Residencyコミュニティがあるんだけど、ぼくらはそこにあがった質問にはなるべく迅速、かつ誠実に答えるようにしている。SNSに投稿したカジュアルな質問に対して、政府の公式チームから返答があったら、誰でも驚くし、嬉しいだろう?」とアダム。

その誠実さが実った、こんな出来事もあった。

「2017年にセキュリティの欠陥が見つかり、カードを再発行する必要があった。相当なクレームがあると覚悟し、専用の問い合わせ窓口も開設したんだけど、ネガティブな反応は想定より遥かに少なかったんだ」

それも、アダムらが日頃からのユーザーサポートを怠らず、こまめにコミュニケーションを取っていたからに他ならない。「彼らユーザーからのコメントは、時として大きな気付きをぼくらに与えてくれる。ぼくら自身がユーザーから学んでいることも多いよ」とアダムはコミュニティの意義を説明する。

文=斎藤アレックス剛太

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