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「全米球場跡地巡り」に感じるロマン

写真=インディアナ州立博物館

2016年夏、僕はシカゴからグレイハウンド・バスに乗って、インディアナ州フォートウェインを目指した。危険なイメージがあるアメリカの長距離バスだが、僕にとっては、全米の球場跡地巡りに欠かせない移動手段で、いつも快適な旅を提供してくれた。バスターミナルがダウンタウンにあることが多いため便利だし、安いのが最大の魅力だ。

日本人にはあまり馴染みのない街かもしれないが、フォートウェインは、インディアナ州北東部に位置し、州内でインディアナポリスに次いで2位の人口約26万人の都市。この地域は、かつて工業都市として栄え、脱工業化が進んだ「ラストベルト」(Rust Belt、錆びついた工業地帯)と呼ばれている。日系企業の誘致活動を推進している街の一つだ。

インディアナ州とお隣のミシガン州は、昔からビールの醸造が盛んだが、フォートウェインのダウンタウンにも醸造所が何軒かあり、たまたま見つけたグノーム・タウン・ブリュワリーで飲んだ新鮮なクラフト・ビールとフレンドリーな店員の笑顔が長距離バスの疲れを癒してくれた。

ブリュワリー
筆者が訪れたグノーム・タウン・ブリュワリー。

野球観戦、球場跡地や野球博物館見学のため、インディアナポリス、サウスベンド、エバンスビル、ハンティンバーグ、ジャスパーなど州内各地を訪れたが、旅先で出会った現地の人々はいつも好意的だった。そんなインディアナ州の人々は、フージャー(Hoosier)と呼ばれている。この言葉の由来には諸説あるが、開拓時代に道で出会った人々が互いに「Who’s  there?」と言ったことに始まったとの説もある。

このフージャーには、「野蛮な田舎者」といった意味もあるようだが、インディアナの人々は、この言葉を「真面目な働き者」とポジティブにとらえている。インディアナポリスには、かつてアメリカン・アソシエーション(1884年)、ナショナル・リーグ(1887年~1889年)、フェデラル・リーグ(1914年)の3つのメジャー・リーグにフージャーズという名前の球団があったし、シカゴ・カブスのカイル・シュワバー外野手の出身校、インディアナ大学の野球部もフージャーズだ。

グレイハウンドのバスターミナルがあるダウンタウンから、メイン・ストリートを西に歩き、キャロル・ロンバート・メモリアル橋を渡ると、少し危なげな雰囲気の街並みに変わる。これまで全米各地の球場跡地を訪れたが、その多くが治安の悪い地域にある。荒廃したスラム街に跡地があることも珍しくない。できるだけ身軽で目立たない恰好をし、危険を察したら、近寄らない、後戻りしてでもその場から立ち去る、万が一犯罪被害に遭遇したら抵抗しないことが旅先で自分の身を自分で守るための鉄則だ。これまで、自分なりに用心してきたつもりだが、幸いにも旅先で危険な経験をしたことは一度もない。

それにしても、薄気味悪い場所だった。セント・メアリー川沿いに立ち並ぶ民家の庭は、手入れされておらず、そこで屯している若者たちの視線を感じた。じっと睨まれているような気がした。笑顔で挨拶すべきか、あるいは、目を合わせないようにすべきか悩んだ末、前者を選んでみたが、完全に無視されてしまった。通りの突きあたりにキャンプ・アレン・パークという名前の小さな公園がある。ここがアメリカのプロ野球リーグで初めて公式戦が行われた場所だ。

文=香里幸広

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