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公務員イノベーター列伝


職員の意識の変化も大きい。「滞納があれば差し押えや捜索、不動産公売をするのは当たり前。厳しい処分をすれば、怒鳴られるのも想定内」という意識で臨むと、多少のことでは動じなくなった。その結果、滞納を具体的にどう解消していくかという、次のステップにスムーズにコマを進めやすくもなった。

ただ、厳しい対応に踏み切れば、当然、市民からの反発も受ける。なぜ、あえて茨の道を選んだのか。その選択の裏には、やはり保育料の徴収を担当していた時に感じた、ある思いがある。

大多数の人が当然支払う保育料だが、わずか数%の支払わない人がいる。真面目に支払う人の中には、苦労しながらどうにか納めている人もいた。「滞納者が得をする。こんな不公平なことないやん!」そう強く感じたのがスタートだという。

「滞納者の声ばかりを聞いてしまうと、その裏にいる大多数の納税者が損をしてしまう。そんなのおかしいですよね。真面目に頑張っている人が馬鹿を見るような世の中にはしたくないじゃないですか」と、岡元は語気を強める。

税金への意識が強いからこそ

「お前ら、税金で飯食ってるくせに」と、そんな厳しい言葉を、窓口で吐き捨てられたことも一度や二度ではない。しかし、岡元は言う。

「税金で飯食ってるからこそ、一生懸命、市民全体のために仕事せなあかんと思っています。税金で給料をもらっているから、役割を果たさないといけない。窓口で怒鳴られたりすることもありましたけど、毅然と対応すべきだと考えていました」

差し押さえは、滞納者の意思にかかわらず、強制的に徴収するという性質上、どうしても滞納者を苦しめてしまう側面もある。だからこそ、他の滞納者に緩慢な対応をしてしまったら、今まで辛い思いをさせた人に申し訳が立たない。岡元はこう続ける。

「厳しく接することで苦しい思いをさせることはわかっているんです。でも、苦しい中でも優先順位を変えてもらって、『岡元さんのためやったら』と言って払ってくれる人もいました。それが、『窓口で怒鳴る人には対応が甘くなる』となったら、今まで厳しく接してきた人たちに顔向けできないですよね」

真面目に納税する人に報いる仕事をしたい──。厳しい対応もいとわぬその姿勢には、公正公平な社会を実現する、行政マンとしての矜持が溢れていた。

連載 : 公務員イノベーター列伝
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文=加藤 年紀

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