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就農経験ゼロから滋味豊かで画期的なアスパラガスを作り上げた農家と、革新的な野菜収穫ロボットの開発に邁進するベンチャー社長。

その2人が出会った土地、それは九州の佐賀県だった。
そして、そのベンチャー企業は、佐賀県鹿島市に拠点を設けた。

なぜ、佐賀県で日本の農業に新たな風を巻き起こす収穫技術が生まれようとしているのか。そのヒントは、スピード感をもって開発に携われる環境が整っていた佐賀県の土地柄や人柄にあった。

佐賀県太良町で全国にファンを持つブランド「森のアスパラ」栽培に取り組む農家、安東浩太郎・美由紀さんご夫婦と、AI野菜収穫機を開発するスタートアップの企業inahoの菱木豊氏のストーリーから、イノベーションの種をまき続ける佐賀県の魅力に迫る。


経験ゼロからの農業

「結婚の挨拶に行った時、妻の実家がある太良町で食べたカニや牡蠣、棚田米がとても美味しかったんです。それに夜は星が降ってくるし、こんな自然環境で一生過ごしたら楽しいだろうなと」

美由紀さんの実家である佐賀県太良町を初めて訪れた時のエピソードを笑顔で語る安東さん。

農業経験はゼロ、道具の名前さえわからないところからのスタートだった。

しかし、こうした「何でもやってやろう」の精神が、佐賀県の土地柄にマッチしていたのだと浩太郎さんは今振り返る。

「急に夜中に目が覚め、『太良に行くぞ』と決めて妻を起こし、朝5時に太良町の実家に挨拶に行きました」
 

栽培ハウスを一度建てると1、2年ではやめられないという。周りの人からも反対されたが、アスパラガスの栽培をすることにした。

当初は孤独な作業を強いられたものの、いつも前向きに挑戦していくうちに、次第に周囲のサポートに恵まれるようになり、軌道に乗り始めた。中でも、佐賀県による補助が手厚かったという。

「就農給付金ももらえましたし、うまい具合に回りました。ハウスの設置にも補助金を6、7割負担してもらえたんです」

なんでも挑戦してみるという精神はアスパラガス栽培にも生かされている。肥料の会社から提案された肥料は全て試している。9つあるハウスをそれぞれ違う肥料にしてみるなど研究を重ね、「森のアスパラ」をブランド化することに成功したのだ。



農家とAIベンチャーを繋いだ、一通のメール

安東さん夫婦の積極的な挑戦は、思わぬ出会いと化学反応を生んだ。鎌倉にあるAIロボットのスタートアップ企業inaho社長の菱木氏から、ある日突然メールが送られてきたのだ。

「『収穫ロボットを作っている会社です。お邪魔させてください』という文面でした。肥料の会社などから売り込みのメールはたくさんくるのですが、『収穫ロボット?なんだこれは?』と思いました。でも、これから農業人口は減っていくし、今後はロボットの時代だともともと思っていたから、話を聞くことにしたんです」
 
タブレット端末を使用しての対談となった。

農業では、収穫台車などの機械を使うことが多い。だから最先端の農業機械に興味はあったという。

「話を聞いた時に、『あ、そういう時代が来たんだ』と直感的に思いました。とりあえず見てみようかと」

美由紀さんも実際にロボットを見て、「キャタピラーやアームがかっこ良いな」と面白がった。抵抗感は全くなく、ロボットをすぐに受け入れることができたのだという。

全ては縁から。アスパラガスの自動収穫機

inahoは野菜収穫ロボットをサービス型で提供している。収穫量に応じた従量課金型マージンのサービスを行なっているスタートアップだ。

アスパラガス自動収穫ロボットを作るきっかけも意外なものであった。

「AIを勉強していた際、鎌倉野菜農家の方とご縁があり、野菜ではなく雑草のみを抜く機械を作って欲しいといわれました。その話を九州のアスパラ農家の方と話す機会があり、かなり収穫に時間がかかっていることを知り、アスパラガスの収穫機を開発することにしたのです」

農家とのさまざまな縁から、アスパラガスの収穫機をつくることになった菱木氏。

「もともと農業も何も知りませんし、まずは実態を知るということから始めようと思い、まずはグーグルで検索をかけたところ、安東さんのホームページが出て来たんです。それでご連絡をとりました(笑)。新しいことを取り入れていこうという考え方をお持ちの安東さんなら受け入れてもらいやすいだろうな、と。安東さんといろいろ試行錯誤することで相乗効果もあり、一緒にやったら楽しそうだなと思いましたね」


タブレットで通話するinaho菱木氏と安東さんご夫婦。

2人の出会いから野菜収穫ロボットの正式ローンチまで、わずか1年あまり。当人たちも驚くようなスピード感だったという。

「inahoの方々のフットワークの軽さに驚きました。俺みたいな人がいるなと思ったら、菱木さんは私以上にすごい人でした」

ものづくりは現場でやってみることが重要となってくる。それを実現させてくれたのも開発のスピードを上げる後押しとなったと菱木氏も言う。

「安東さんは深夜12時でも畑で実証実験をさせてくれたんです。全面的に開発協力してもらったおかげでスピード感を持って前に進むことができました」

最新の収穫機2号が登場した。

「何事もやってみる」佐賀県という土地

菱木氏にとって、佐賀県という見知らぬ地で事業を始めることに抵抗はなかったのだろうか。

「県内の方から、『佐賀はすごく閉鎖的だよ』と言われたこともありましたが、そんな雰囲気は感じませんね。民間、行政問わずみなさん暖かく受け入れてくれています。また、ロボットの開発は現場でやってみないとわからないことが多いのですが、数多くの実験や検証に対して積極的に協力してくれたことに感謝しています」


安東さんご夫婦のハウス

当初は他の場所を拠点として検討していたという菱木氏。佐賀県を選んだ理由もまた、安東さんに共通するものだった。

「家賃や給与など、とにかく補助が手厚かったんです。我々のようなスタートアップにとってはありがたい。今後も佐賀県内に何箇所か拠点を増やしていこうと考えています」

さらに菱木氏は、佐賀が「農業先進県」だったことも決め手になったという。

「野菜の面積当たりの収入を単収というのですが、その単収が非常に全国的に見てもトップクラスだったのも、佐賀に拠点を置いた大きな理由です。佐賀には、レジェンドと呼ばれる篤農家の方たちも多くいて、日本で最先端の農業をやられています。世界で農業の最先端と言われるオランダでも、まだ収穫は手作業。これがロボットでできるようになれば、最新の農業技術と収穫技術をかけあわせることができ、世界でも先駆ける事例を佐賀県から始められます。そしてそれができるポテンシャルが佐賀にはあるんです。佐賀という土地だからできるのです。そこに自分たちも乗っかっていきたい」

新しい挑戦にスピード感を持って後押ししてくれるポテンシャルを持つ場所、それが佐賀県なのだ。

そんな佐賀県で今後やっていきたいことを2人に聞いた。

安東さんは、人手不足が叫ばれる中、品質を落とさず「森のアスパラ」の生産量拡大を測るためにはロボットが必要と考え、同時に期待を寄せている。

「『森のアスパラ』の生産量を増やすことが一番の目標ですが、それだけでなく、佐賀県では新規就農者が耕作放棄地を使って農業を活性化できるというビジネスモデルができるんです。これは佐賀に留めておくつもりはなくて、ロボットが使えるようになれば全国展開、世界展開できるのではないかと思っています」



菱木氏も安東さんのビジョンに呼応してこう話した。

「当面の目標は今年5月の正式リリース。残り3ヵ月では、使いやすいインターフェイスの開発や、防水防塵、使いやすいさなどを目指してやっていきたいと思っています。日本トップクラスの単収を誇る佐賀、そこでロボット収穫機という、世界最先端のことができる、これは佐賀という土地だからこそできることなのですから」

職種は違えど新しいことに挑戦する。挑戦するスピリットを持つ2人、そしてそのスピリットを支える佐賀県だからこそ実現しつつある「農業革命」の行方に注目したい。


佐賀県では、県内の自治体・事業者と首都圏のIT企業・スタートアップ企業との共創を目指し、「#CreateSaga」と題した場を創出して、一歩先を行く事業を呼び込んでいる。

2月1日には、霞が関のイベントスペース・SENQ で、伊万里市長、有田町長をはじめ、佐賀県内のプレイヤーと首都圏を中心に活動するIT企業・スタートアップ企業20社とのマッチングイベントを開催し、互いの共創の可能性について熱く議論を交わした。


佐賀県提供写真

また、3月12日~13日の2日間、マッチングイベントに参加した企業10社を佐賀県内の自治体や事業者に案内し、具体的な共創案を模索する機会を設けている。

このような取組を通じて、地域×スタートアップによる新たな共創が芽生え、佐賀県内での新たな事業展開が生まれることが期待される。

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新たな佐賀の歴史を共創しよう。
#CreateSaga

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Promoted by 佐賀県 / 編集・文=久世和彦、飯村彩花 / メイン写真 = 小田駿一 記事内写真=岩間辰徳(GEKKO)

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