スタートアップの「ブランディング論」




Conservative(保守的)、Liberal(民主的)という政治的なイメージの違いがニュースとなって色濃く反映されたのが2017年中頃でした。

当時ウーバーは訴訟やスキャンダルで世間を賑わせ、消費者の間でもどことなく独裁的かつ強行的なイメージがありました。加えて、トランプ大統領が発令したイスラム系移民の入国拒否処置に対するウーバーの対応が火種となり、「#DeleteUber(ウーバーを消そう)」というキャンペーンが大きなムーブメントになりました。

もちろんこのキャンペーン自体をリフトが仕掛けた訳ではありませんが、これを後押しする形で、リフトは#DeleteUberキャンペーンを支持する米国自由人権協会(ACLU)に100万ドル寄付することを発表し、リフトがLiberalであるというイメージを強く出していったんですね。これら一連の対応により、リフトのダウンロード数はその日通常の2倍近くにまで上昇しました。

結果、リフトはコミュニティとドライバーを大切にする「Liberalな存在」と自分達を位置付けることによって、ブランドとして莫大な資産価値を獲得しました。

90%の消費者は「ファンになる」モノを買っている

市場に出ている沢山の競合ブランドの中から、「何故いつも特定のブランドを買うのか」明確な理由をもって購入している消費者は恐らくほとんどいません。

商品が溢れ差別化の難しい市場であるからこそ、この「ファンになる」というイメージが消費者の購買行動に大きく影響してきます。ほぼ同じような品質で、価格もそれほど違いがなければ、自分がファンであり、えこひいき、応援しているブランドの商品を購入するのは必然だと思います。会社の個性や価値観が明確化されているほど、消費者にとってこの「ファンになる」が描きやすくなるんですね。

ブランディングのプロセス

ビジュアルアイデンティティ(ロゴなど)を作るにしても、プロダクトのデザインをするにしても、マーケティングキャンペーンを作るにしても、コピーライティングをするにしても、まず最初に会社のビジョンや価値観を明確にしていくところからはじめます。ここをスキップするということは、図面無しで高層ビルを立てるようなものです。

当たり前のことのようですが、経営陣の間でここが明確になってない会社が少なくありません。なので経営陣との対話を通じてそれらを一緒に定義し、言語化していきます。「Brand Personality」の言語化の過程を経た後、「Brand Identity」と呼ばれるブランドのガイドライン、いわば全てのデザイン、コンテントの土台のようなものをつくり始めます。

正しい人を正しい場所に

ある程度土台(図面)ができてくると、それぞれの部門に落とし込んでいく作業が成功への第一歩となります。落とし込んでいく作業というのは、プロダクトのデザインであったり、メッセージングであったり、イラストレーションや写真、ビデオといったブランドアセットの制作やキャンペーンの企画もこれにあたります。

これらを社内で取り組む場合、デザインチーム、エンジニアリングチーム、マーケティングチーム、人事をはじめとする社内外の様々な関係者とのコミュニケーションが必要となってきます。

僕の経験上、ブランドの価値観、会社のビジョンが社内外問わず共有されている会社のみが長く生き残っていけると思います。会社が大きくなればなるほどブランディングを通じて関係者をうまく巻き込み実行していけるか、ある種非常にコミュニケーション能力の問われる仕事かもしれませんね。

文=玉井和佐

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