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創業当時の日本橋を、デジタル・テクノロジーにより再現。時をかける新緞帳

そんな明治座が今回新たに挑戦するのは、アート集団チームラボが手掛けるデジタル・テクノロジーを駆使した、「動く緞帳」だ。

四季喜昇座 - 時を紡ぐ緞帳

緞帳とは、劇場の舞台と観客席を仕切る垂れ幕のこと。芝居の開演前と終演後に観客の目に長く留まる、いわば舞台の顔といえる装置だ。従来、明治座は織物の緞帳を使用してきたが、創業145周年の節目にデジタルによる映像表現を取り入れたものに作り変えることを決断したという。同じく宣伝部の君川博哉さんは、プロジェクト発足当時をこう振り返る。

「初めは大きな緞帳に迫力ある映像を映し出そうと考えていました。しかしチームラボ側から、緞帳という日本独自の舞台機構の文化を生かしつつ、デジタル・テクノロジーで緞帳そのものを拡張する作品制作の提案があり、それに賛同しました」

新緞帳『四季喜昇座 - 時を紡ぐ緞帳』では、明治座の前身である喜昇座が誕生した文明開化頃の日本橋の町並みと人々の営みが、チームラボ独自の技術により4K解像度と同等の高画質で描かれている。当時の多様な職業や歴史上の人物も登場し、作品世界を生き生きと彩る。

作品世界の季節や天候、時刻の変化は、実際の日本橋のものとリアルタイムに連動しており、劇場内でも四季折々の季節感を感じることができる仕組みになっている。

「緞帳の中の世界は、実際の日本橋の日の出とともに明るくなり、日の入りが近づくと夕焼けに、夜が深くなるにつれ暗くなります。日本橋で雨が降っているならば、作品世界でも雨が降る。また、凧揚げ、お花見、お祭り、雪景色などの季節の営みもお楽しみ頂けます」(君川さん)

チームラボの特有の《和のテイスト》がふんだんに盛り込まれた、明治座の新たな伝統になりそうな作品だ。

「《チームラボ》で初めて明治座を知るという人も増えると思う。緞帳が、明治座での感激体験の入り口になれば」(君川さん)

しかし、劇場の主役はもちろん舞台。緞帳が舞台の感動を阻害することがないよう、派手な演出は一切使用していない。訪れた人々が緞帳を眺め楽しむことで、幕が上がった後のお芝居への高揚感がさらに高まるように心がけたという。

また、君川さんによると、明治座を古くから愛する年齢層にも違和感のないものになるよう配慮した。

「昔から明治座に足を運んで頂いている方々が、新緞帳により明治座が変わってしまったと感じるのではなく、逆に明治座のさらなる魅力と感じて頂けるようにしたい。明治座の感動体験に、年齢は関係ありません」

訪れたすべてのお客様の感動体験を第一に、新たなものに取り組む姿勢。明治座の揺るがない信念の延長線上に、今回の新緞帳がある。

創業150周年とその先も、伝統と革新の姿勢を忘れずに。明治座のこれから

Winter 四季喜昇座 - 時を紡ぐ緞帳

新緞帳に伴い大幅改修を施した舞台設備とその技術は、緞帳のみならず、舞台演目自体の可能性も大きく広げた。新たに導入したプロジェクターによる役者と映像が融合した作品や、観客と連動した舞台の構想など、明治座の新しいものを求める姿勢は留まることを知らない。

「劇場だからこう、という概念に囚われることなく、常に新しいメディアを取り入れながら作品を提供していきたい」(君川さん)

最後に、3人からそれぞれの今後の展望を伺った。

明治座のこれから
左から君川さん、松林さん、眼目さん

「今後、新緞帳の他にも明治座の新しい顔を作っていきたいと考えています。新しいものに関わることで、明治座の伝統と革新が更新され、次の歴史へと繋がっていく。今まで通り、お客様のニーズを汲み取る姿勢を忘れずに取り組んでいきたいです」(松林さん)

「先人が大切にした、お客様に楽しんで頂くという軸をしっかりと持って作品作りをしていきたい。お客様に、老舗明治座でもこんな新しいものをやるんだ、と驚きを持って受け止めて頂けるようやっていきたいです」(君川さん)

「今回導入した設備を駆使して、今後劇場内のデジタル化を進めていければと考えています。劇場に足を運び、お芝居を見る一連の行為が、総合的な感激となるように工夫を施して、演劇人口を増やしていけばいいなと思います」(眼目さん)

文=大竹初奈

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