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株式会社cart 代表取締役社長兼CEO 橋本雅治

苦労人でありながらその片鱗を一切見せず、デザイン雑貨の企業を生み、上場させ、そしてあらたにナチュラルオーガニックのプラットフォームを作ろうとする起業家〈ナチュラカート〉の橋本雅治。彼は今回のテーラーメイドとの企画にあたり、なぜ自分が登場するのか疑問だったはずだ。Forbesは投げかけた。「強み、という共通点なんですよ」と。新ドライバーM5/M6の真似のできない技術が、橋本の起業ストーリーとかぶるのだ。


テーラーメイドは、“ついに作ってしまった”と表現すべきドライバーを送り出した。これをやられたら他社は追随できないというシロモノだ。ゴルフは道具の性能が厳しく管理されている。違反、即、全品回収となることも珍しくない。

 ⇒ まず規格オーバーのドライバーを作る
 ⇒ 一本一本を規格上限ギリギリに落とす

これだけだ。こうすることで、性能の上限で均一の製品が生み出される。連載第1回でも記したが、工業製品はその精度に必ずムラが発生する。つまり高度に均一な製品は事実上不可能なのだ。特性ともいえるこのムラを、逆転の発想、気付きにくかった発想でモノづくりそのものを変えた。橋本は早速、メーカーの立場からこの強みを評した。

「いいですね。打った感触も。フィッティング(スイングに合わせた微調整)をすればさらにいいでしょう。しかし、このクラブ、我々ベンチャー起業家と同じ気質を感じますね。ゴルフクラブは大手メーカーの製品にやはり〈当たり外れ〉があると言われます。それが高精度を売りにブレをなくす一点に絞ったこと。これはむしろベンチャー的視点です」

テーラーメイドは大手メーカーだ。高度に均一な製品を生んでしまった以上、もはや独断市場になりうる強みを得たのではないか。一人勝ちは業界の正しい姿ではない。逆になんとも言えない不安すら感じる。橋本はこの強力すぎる強みを、彼の生み出してきたものに重ね説明してくれた。

売上の3割を放棄した男と、真っ白なドライバー

「私が立ち上げたイデアインターナショナルの当初の姿はデザインクロックの販売でした。大手ブランドの牙城+類似ブランド、そこに第三極というマーケットを作りました。デザインクロックのオンリーワン、それがイデアであることで一定の成功を見ましたが、気づくのです。マーケットのお客様がすでに成長していることに」

2000年前後、世の中は変化していた。画一的な商品と、橋本流に言えば「ファンクショナルゾーン」という機能性重視のモノに囲まれる時代から、デザインやライフスタイルに重きをおいた「エモーショナルゾーン」に入る商品やSHOPが増えている頃だった。感性でモノを選ぶ消費者が増え、セレクトマーケットが成熟していく。商品は機能別に並ぶのではなく、世界観の中にふさわしいアイテムが揃うのだ。



「イデアが求めたデザイン重視のライフスタイル商品は、この時に企業としても加速します。もっとも大きな決断は、量販店さんからセレクトショップへ注力の舵を切ったこと。量販店さんは売上の3割を頂戴していた重要なお取引相手でしたが、その数字を手放したのです。それでも1年で軌道にもどし利益率も向上させた。これはデザインという自分たちの強み、特色を再発見するために必要な道でした」

マーケットを絞リこむことは、自らのポジショニングとビジョンが無いと無謀なことと同義だ。イデアインターナショナルの軽快にして重要な決断を下した姿は、上場はまだ先であったとはいえ、まさにベンチャーだ。

一方、テーラーメイドもポジショニングを理解している。「消費者の目には革新のメーカーの印象が強い。開発にもマーケにも業界にないことをやろうとする意思を感じる(橋本)」の通り、実際、世界で初めてメタルウッドを作るなど、イノベーティブな歴史をいくつも作っているし、真っ白なドライバーを出した時はさすがに驚いたが、1点の強みを最大限に製品に落とし込む姿が見て取れる。

そして今回の逆転発想のドライバーへつながるのだ。

今の橋本だから言える、無限に広がるゴルフの可能性

橋本は20代で、実家である旅館の倒産を肩代わりした経験を持つ。慶応の法学部卒「若い僕には役にたちました(橋本)」という少なからず持ち合わせた知識をもって、持ち前の強い意思で逃げず、戦い、あまりにも大きな金額を完済した。

「20代でのこの経験は今でも血肉となっていますね。イデアを起こした時も、恐怖感や不安感はありませんでした。やれることをやろうと。かならず道は開けるとね」

その後、イデアインターナショナルを上場させ、退任。現在の「ナチュラカート」を立ち上げ、2つ目のベンチャーをさらに拡大させようとしている。

「世界ではあたりまえに手に入るナチュラル・オーガニックの商品が日本では手に入りづらい。小売とメーカーを20年やってきたなかで、この遅れている分野を強化しようとしたとき、公的な規制もあるなかでは新しく起業するしかなかった」

【連載#1:プロダクトは発想だけでは成功しない】

現在、3期目に入る同社は順調に成長中だ。プラットフォーマーになるべく動く橋本は、専門性とEコマースの進化に鍵があるという。

「アマゾンと勝負してもしょうがない。しかし、アマゾンに無いものもある。それが専門性です。ナチュラル・オーガニックのジャンルで競合がほとんどいないんです。しかし需要は高い。Eコマースが国境を超えられることでBtoBもCtoCも両方手がけ、その裾野がひろがると同時に、新しいプラットフォーム化としたのです」



専門性といえば、ゴルフもそのイメージは強い。テーラーメイドにお聞きすると、スポーツ量販店とゴルフ専門店では、やはりゴルフ専門店のほうが売上が良い傾向にあるという。橋本は自らのビジネスをヒントに、テーラーメイドの強みをアイデアでフォローする。

「そこで期待するのが、ゴルフ界もEコマースへの本格的な注力ですね。もし、新興ブランドが登場したら間違いなく〈DtoC〉で売りに来るでしょう。それが世界のうねりでもあります。直営店のEコマース展開として、例えば、年間定額制でテーラーメイドの製品が自由に使えるとかいいですよね。アパレルも手がけるトータルゴルフメーカーですから」

多くの「現実的な制約」が多いなか、実現度が高くないまでも、同席したテーラーメイドのスタッフもふくめ、どうも隠せないワクワクが表情に出ているように見える。

「何ならゴルフ場を買い取って(もしくは契約して)、若い世代を取り込むサブスクリプション型のテーラーメイドゴルフ場があってもいいですよね」

もはや、聞いている筆者もワクワクが溢れ出る。

強みとはなんだ

何かの強みをもって企業を成長の波に乗せること。革新という強みをもって画期的な製品を生み出すこと。強みに転嫁できる発想は、ポジショニングの理解、市場の見極めという本質的なビジネスセンスでもあった。

橋本はM5/M6の製品について、自分へのエールにも似た言葉で評価した。

「このドライバーが逆転の発想だということについて?そうですね、ビジネスをゲーム・チェンジしようとしたら、同じ方向に更に上へ、更に上へと向かっても先は無いと思うんです。多くの常識を変える考え方が必要なんです」

テーラーメイド ゴルフ株式会社 M5/M6ドライバー

連載「テーラーメイド」
── ありえない逆転発想の製品 ──

#1公開中|マーケの鬼を本気にさせた逆発想のモノづくり
#2本記事|強みを持つ起業家と挑戦したテーラーメイドの共通点
#3 公開中|上手い人ほど道具に頼る。セオリーを鵜呑みにしない自分とクラブの関係

Promoted by テーラーメイド text by Forbes JAPAN 坂元こうじ photographs by Setsuko Nishikawa

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