Close RECOMMEND

世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

京セラ代表取締役社長 谷本秀夫

「若い頃は私もしょっちゅうコンパを開いていました」と笑う京セラの社長、谷本秀夫が座っているのは、本社内にある100畳敷きの“コンパ用の大広間”。京セラでは、稲盛和夫による創業時より、社員の信頼関係構築のためコンパと称する懇親会が推奨されている。

「人と人が信じ合うには、結局、膝を突き合わせてたくさん話すしかないんですよね」

和やかな表情からは想像しにくいが、谷本は数年業績が停滞していた同社に新風を吹き込んだ実力派だ。2016年度に売上高1兆4200億円強だった同社だが、谷本が社長に就任した17年度の売上高は約1兆5800億円と過去最高を記録。今期はそれをさらに更新し約1兆6500億円を見込む。20年度に2兆円を目指す。

「これを発表するのは勇気が要りましたが(笑)、不可能な数字ではなくなってきました」

好調の理由を聞くと「部品業界の景気がよかったんです」といたって謙虚。だが、積み上げられた数字が、谷本の見事な舵取りを証明している。その原動力になっているのが、「後にも先にもこれほど苦労したことはない」と言う、30歳で任されたファインセラミックの製造工程を変えるプロジェクトリーダーとしての挑戦だ。ファインセラミック事業は京セラの祖業でもある。

「当時、セラミックの焼成には三十数時間かかっており、かつ失敗により再度焼き直しが発生したりと採算性が非常に悪く、赤字状態。利益を出すために根本的に作り方を変える必要がありました」

研究開発から製造、営業までおよそ60人をとりまとめながら、各部門と連携。「若かったのでなんでもやりましたね」と苦笑する。1年がかりでラインを立ち上げると、焼成時間はわずか3時間にまで短縮された。

「ですが、ラインを設置した後の方が大変でした。実験通りに動かず、壊れたからなんとかしてくれ、と2日おきくらいに夜中に電話がかかってきた。動きが安定してきてからは、今度は半年間くらい受注が埋まらなかった。営業さんに同行して顧客回りもやりました。10億円以上もの投資をしていたので、その時は本当にしんどかったです」。

ようやく注文が来るようになった矢先、またも落とし穴が。

「今度は注文が一挙に押し寄せ、生産が追いつかずまたお客様に叱られました。ちょうどいい、ってことは一度もなかったですね」

文=池尾 優 写真=苅部太郎

VOL.33

「キャッシュレス化」の追い風と危機感|オリ...

VOL.35

「とにかくやってから、直せばいい」。ヤマハ...

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい