世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

インダストリア社長 高橋一彰

トヨタ、BMW、GMなど名だたる企業が採用するフィルター「FILSTAR」。「産業廃棄物ゼロ」をうたう製品は、いかにして世界に広まったか。


埼玉県入間市郊外、人家もまばらな一角に、インテリアや車のショールームと見間違うような瀟洒(しょうしゃ)な建物が建っている。中を案内してくれたのは、デザイナーズスーツに身を包んだ伊達男。インダストリアを率いる高橋一彰社長だ。

「ブランディングのためにはデザインが重要です。僕はトム・フォードがデザイナーをしていたときのグッチが好き。わが社のデザインも、彼からインスピレーションを受けています」

同社の主力製品は、液体からゴミを取り除くエレメントレスフィルター「FILSTAR」。工場ではさまざまな用途できれいな水が求められるが、浄化フィルターは短時間で目が詰まり、頻繁に交換する必要がある。一方、「FILSTAR」は遠心分離の原理を使い、交換なしで使い続けられる。手間やコストを軽減でき、環境負荷も少ないオンリーワンの商品だ。


職人への強いリスペクトが先代から受け継がれているindustriaの「核」だ

一般的にBtoB製品はスペックやコストで選ばれることが多く、消費財ほどブランドイメージは重視されない。実際、「FILSTAR」も、その性能が高く評価され、多くの自動車工場や工作機械に採用されている。しかし、高橋はブランディングにもこだわりをも見せる。

「かつてPCメーカーは、『Intel Inside』とうたってインテルのブランド力を活用して、自社製品の品質をアピールしました。それと同じことをインダストリアでやりたい」

じつはブランディングにこだわる理由は他にもある。

「ものづくりに根づく3Kのイメージを変えたい。職人はホントはかっこいいんです」

かくいう高橋も、幼いころは工場の仕事に魅力を感じていなかった。発電所で使う分析計メーカーに勤めていた父は、高橋が高校生のころに同社の下請けとして独立し、株式会社タカハシを創業。夏休みにアルバイトで手伝ったが、油まみれの仕事に嫌気が差した。家業を継ぐつもりはなく、大阪の大学を出てSEになった。

しかし、発電所に納入される製品が自由化されて、安い外国製品が流入。そのあおりで父の会社は仕事が激減した。「身内なら人件費がかからない」と母に泣きつかれて、実家に戻った。

コストダウンよりブランド戦略

いざ手伝い始めると、ずさんな経営に驚いた。メーカーから1000円の製品の図面が来ても職人は自分が納得するまでつくりこむ。ヘタをすると1万円のコストをかけることもあり、経営が傾くのも当然だった。

「ただ、ものづくりにこだわる職人の姿は素晴らしいとも思いました。それならば、1万円かかっても売れるものを自分たちで企画開発して売ればいい。そう考えて、まず設計から手がけ始めました」

合理化してコストダウンを図るより、職人の感性を活かして高付加価値のものを開発して、ブランディングしたうえで売る──。もともとファッションが好きで、ルイ・ヴィトンなどに興味があった高橋が、この戦略にたどり着いたのは必然だった。

文=村上 敬 写真=吉澤健太

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい