現場からの医療改革

(Trevor Williams / Getty Images)

麻疹(はしか)が流行している。国立感染症研究所(感染研)によると、2月13日現在、感染者は167人で、都道府県別では三重県49人、大阪府47人と西日本に多い。

流行は西日本に留まらず、全国に拡大している。2月10日には神奈川県の患者数が7人となった。昨年1年間の6人を上回る。

もちろん、これは氷山の一角だ。私を含め、最近の多くの医師は麻疹を診察した経験が少なく、見落としている可能性が高いからだ。

麻疹とは麻疹ウイルスの感染によって起こる感染症だ。感染力は強く、咳やくしゃみによる飛沫だけでなく、病原体粒子が空中を漂い、離れたところにいる人も感染させる。これを空気感染といい、食い止めるのは難しい。

麻疹が怖いのは合併症を起こすことだ。重要なのは肺炎(15%)と脳炎(0.2%)で、時に致死的となる。医療が発達したわが国でも致死率は0.1~0.2%とされている。

我が国は麻疹の流行を繰り返してきた。過去10年間に限っても2008、12、14、15、16、18年、そして今年と7回も流行している。こんなに流行を繰り返すのは先進国としては異例だ。

予防接種を1回しか受けていない世代がある

なぜ、わが国は流行を繰り返すのだろうか。それは予防接種が不十分だからだ。

麻疹の予防接種は2回接種が推奨されている。1回の接種で5%の人に免疫ができないし、免疫ができても、1回の接種だけなら年齢を重ねるうちに免疫が低下してしまう人がいるからだ。

現在、我が国では麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の形で、1歳代と小学校入学の前年に合計2回接種する。

ところが、この2回打ちが始まったのは2006年だ。子どもの頃に麻疹にかかった50歳以上の世代と、2回のワクチン接種を受けている若年世代を除く若年・中年世代は予防接種を1回しか受けていないため、免疫のない人が多い。最近の流行は、この世代を中心に繰り返している。

まずやるべきは、この世代への追加接種だ。厚労省は2007年の流行を受け、翌年4月から5年間に限定し、中学1年生および高校3年生相当年齢の者に定期接種を実施した。しかしながら、それ以前の世代は放置したままだ。

2015年3月、日本は世界保健機関(WHO)が麻疹の「排除状態」と認定した。西太平洋地域ではオーストラリア、マカオ、モンゴル、韓国に次いで5カ国目だ。ただ、これは国内に由来する麻疹ウイルスの感染が3年間確認されなかったためで、海外から持ち込まれる麻疹は、毎年のように流行を繰り返している。

流行を繰り返すのは麻疹だけではない。風疹も同じだ。風疹は昨年来、流行が続いている。

風疹に対しても厚労省は動いた。2019年1月、39~56歳の男性を対象に抗体検査を実施し、抗体価が基準値を満たさない場合に追加接種をすることを決めた。

厚労省は2020年7月までに、対象世代の男性の抗体保有率を85%以上、2021年度末までに90%以上に引き上げることを目標に掲げた。そのために、2020年7月までに抗体検査を約480万人、定期接種を約100万人に、2021年度末までに約920万人を検査し、約190万人に接種する予定だ。

筆者も追加接種には賛成だ。今回、使用するワクチンはMRワクチンであるため麻疹対策にもなる。

文=上昌広

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