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2018年11月、従業員が会社の性的不祥事の申し立てに対するデモ抗議を行なった。(Photo by Mason Trinca/Getty Images)

昨年11月、グーグルでは約2万人の従業員らがデモ活動を行い、セクハラ問題への適切な対処を訴えた。デモの参加者らは、社内からセクハラや差別、人種的偏見を取り除くことを求めた。

彼らが特に問題としたのが、グーグルがセクハラ被害に遭った従業員に強制仲裁(forced arbitration)を、要求していることだった。

強制仲裁は労働者らの権利を事実上剥奪するもので、職場での紛争を内密に処理し、雇用者が幹部を法廷で告訴することを防ぐための措置だ。米国企業の多くが、雇用契約に強制仲裁の条項を盛り込んでいる。

2月22日、グーグルは全社員に対し仲裁を強制することをやめると発表した。グーグル社員らの呼びかけが、会社を動かした形だ。

強制仲裁の制度がある企業では、社員らは問題が起きても法廷に訴えることができない。その代わりに、民間の仲裁人に証拠を提出し、法的プロセスを経ない形で判断を委ねることになる。米国では組合に所属しない社員の半数が、強制仲裁条項に縛られている。

企業側にとっては、強制仲裁のメリットは大きい。社内で問題が発生しても、法廷の場で公にしないまま、内密に処理できるからだ。

今回の抗議活動のきっかけとなったのは、「アンドロイドの父」として知られるアンディ・ルービンがセクハラ問題の発覚後に、密かに9000万ドル(約99億円)もの退職金を得て2014年に退社していたことが発覚したことだった。

グーグルはルービンのセクハラ問題を、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が記事化するまで隠していた。仮にこの問題が法廷で争われていたとしたら、グーグルはこれほど長期間に渡り、問題を隠し通せなかったはずだ。

昨年秋のデモ活動の発生を受けて、グーグルはセクハラ問題に関しては強制仲裁の対象から除外するという決定を行った。だが、セクハラ以外の問題はそれ以降も強制仲裁の対象とされていた。しかも、除外の対象はフルタイムの従業員のみに限定されていた。

その後、80人のグーグル社員が「2019年を強制仲裁の完全撤廃の年に」と題した意見書に署名を行った。そして、2月22日になってようやくグーグルは決定を下した。グーグルは全社員に対し、セクハラ以外の問題に関しても、仲裁を強制することをやめると発表したのだ。この規定は3月21日以降に発効し、フルタイムの従業員に限らず契約社員も対象となる。

従業員がセクハラ問題に限らず、人種差別やジェンダーの問題、給与格差の是正など、社内の様々な問題を法廷の場で争う権利を持つことはとても大切だ。少なくともグーグルでは強制仲裁が撤廃されたが、他の企業もこれに続くことを願いたい。

今回の件が意義深いのは、社員たちの力でグーグルという巨大企業の姿勢を変革できたことだ。グーグルは彼らの抗議活動がなければ、このような措置には出なかったはずだ。この動きに続く形で、他の企業にも同様のムーブメントが起こることを期待したい。

編集=上田裕資

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