LGBTからダイバーシティを考える


自分の偏見に気づくために、どうすればいいか

杉山:村本さんは、「自分の頭で考える」ために何か心がけていることはありますか?

村本:芝居の待ち時間にはなるべく吉本の楽屋にいないようにしています。いつも、ルミネのエレベーターを上がって楽屋に入るまでの間にあるパイプ椅子に座っています。営業で移動する時も、みんなが吉本のバスを使う中、僕だけ電車で移動するんです。

なぜかというと、同じ場所ではいつも同じ会話が繰り広げられているからです。吉本の楽屋にいても似たような話題しか出てこなくて、その積み重ねで空気が出来上がる。そこに浸かっているうちに、その言葉や考え方が、僕の常識になっちゃうんですよ。

当たり前だと思ってなんとなく使った言葉が、ほかのコミュニティからすればひどい言葉になってしまう。だから僕は、なるべくいろんな常識に触れるようにしているんです。

杉山:ひとつの「常識」に染まらないようにすることは、大切だとわかっていても、色々な空気に触れるのは結構大変じゃないですか。

村本:そんなことないですよ。例えば、僕は昨年のレーダー照射問題について韓国人がどう思っているのかを知るために、実際に韓国に行きました。

きっかけは、僕が尊敬している乙武洋匡さんの発言なんです。あるニュース番組で、韓国国内ではレーダー照射問題が報じられていないといわれたところ、乙武さんが「韓国という国は、自分たちが勝てることなら積極的にニュースにして世論を煽る。今回は、どうみてもレーダー照射をしている彼らに問題がある」というニュアンスの発言をしていました。

ちょっと驚いたんですよ。いつもあんなにグラデーションを大事にする乙武さんが、「このリンゴは赤い」と完全に断定して、謝罪しろと言っている。だったら確かめてやろうと。

杉山:それで本当に韓国に行ったんですか。

村本:はい。すると、韓国でもレーダー照射事件はニュースになっていることがわかったんです。じゃあ、彼らはこれについてどう考えているのか。

まず日本でよく言われているのは「国際法では高度150mまでなら航空機は近づくことができると決まっているのに、この距離でレーダー照射するのはおかしい」というものです。

一方、僕が話した韓国人の中には、こんなことを言う人がいた。「国際法は旅客機にのみ適用されるもので、戦闘機には適用されない。だから150m以上であっても基本的には近づいてはいけない」と。

さらに、レーダーには攻撃意図を示す追跡レーダーと、探索レーダーの2種類があって、韓国側は北朝鮮の船を探すために探索レーダーを使っていた。

これも、あくまで一意見ですが、「仮に日本側がいうように追跡レーダーを当てたとしても、追跡レーダーを当てられた戦闘機がいつまでも韓国の上空を飛ぶのはおかしい。危険を感じたのなら、すぐにどこかに飛んでいきませんか?」という声も聞きました。

杉山:村本さんは、どうやって意見を集めたんですか?

村本:僕のインスタグラム経由でランダムに集めた10人程度に話を聞きました。「別にこのことで日本人を嫌いになったりはしませんよ」と言っていましたね。

もちろん正解はわからないですが、韓国に行ったことで少なくともリンゴを赤だと思う人も青だと思う人もいることがわかったし、彼らには彼らなりの考えがあることもわかった。違うコミュニティを訪れることには、価値があるんです。

構成=野口直希 写真=小田駿一

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