フリーライター/エディター


「僕が地方に目を向けるのは、建築の流通構造を変えるためです。これまでは都市で企画とデザインが立ち上がり、そのための素材として地方から木を買い集めるという、都市から地方へのトップダウン型の商流でした。けれど、地方の製材所や材木屋がShopbot(ハード)とEMARF(ソフト)を手にすれば、彼ら自身がプロダクトをつくって都市の人々に直販できる。場所に囚われない、自由な流通が可能になるのです」

作り手全員に還元されるプラットフォームへ

さらにVUILDは、「作り手」を取り巻く関係にもメスを入れる。

EMARFとShopbotがあれば建築技術やデザイン知識がなくても、誰でも手軽にオリジナルのデザインを形にできる。YouTubeをはじめ動画プラットフォームの登場によってユーザーの動画制作が手軽になったように、これまで一部のデザイナーや職人だけのものだった「家具をつくる行為」が誰にでも開かれるというわけだ。EMARFに投稿されるデザインテンプレートが充実すれば、この流れはさらに加速する。

誰でも家具をデザインできるようになるだけでは、「家具づくりの民主化」は実現しない。そのためには、「流通に関わる全ての人が豊かにならなければならない」と秋吉。

EMARF経由で家具を出力した際、エンドユーザーが支払う代金は「EMARFにテンプレートを投稿したデザイナー」や「Shopbotのオーナー」に還元される。

「僕たちがつくろうとしているのは、関わる人全てに利益が還元される、家具製作のプラットフォームです。これが当たり前になれば、生活感度の高い主婦が隙間時間にデザインを投稿したり、建築学生がデザインのロイヤリティで生計を立てる、といった働き方が可能になるかもしれません」

いまのVUILDの目標は、2023年までに1000台のShopbotを日本中に普及させることだ。

「その規模でインフラとして根付けば、ほぼ全ての中山間地域に導入されることになります。例えば大型建築や応急仮設住宅をつくるときには近隣のShopbotが連動して出力することで、量と速度に対応する事も可能になる」と秋吉の構想は広がるばかり。

最後に、もう一つ。これらの事業を通じてVUILDが変えたいのは、人と森との関わり方なのだという。

「高度経済成長期に大量に植えられた日本の森林は、人口減少や産業構造の変化のせいで木材の適切な使い道が見つからず、良質な材に価値が付かないのが現状です。産地直”造”で木製品をつくることができるプラットフォームがあれば、きっとみなさんが有効な使い道を見つけてくれるはず。日本で最も身近な素材である木材が、もっと身近になるように働きかけていきたいと思っています」

編集=フォーブスジャパン編集部

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