魁であれ。変革の時代を生き抜くルール

ジャパンディスプレイCMO/X-TANKコンサルティングCEO・伊藤嘉明

日本には「不言実行」「沈黙は金」「秘すれば花」などという言葉があるが、私はこの考え方が大嫌いだ。自分の目標や、やりたいことはどんどん口に出すべきだと思っている。常に目標を口にしておくことで、緊張感が生まれるし、自分がいま何をなすべきかを考えることにもなる。

人が口にした言葉には力がある。人は自分が口にしたことを実現しようとする。私自身、「自分は優秀な経営者になるんだ」と常日頃から口に出していたら、自分でも「優れた経営者になるためにはどうすればいいか」を考えるようになった。

そんな「有言実行」を信条とする私に対して、周囲には2通りの反応があった。1つはいわゆる「ビックマウス」という批判と、もう1つは「コイツは本気で言っている」というものだ。

例えば、私がCMOを務めているJDI(ジャパンディスプレイ)の最初の戦略発表会のときだ。2018年8月1日、私はその場で「BtoC市場への参入」「定期課金ビジネスの導入」「テクノロジーで社会課題を解決する」という3つの目標を掲げた。

これについては様々な意見があった。JDIが取り組む変革に対して好意的な見方もあったが、ネガティブな意見がかなりあったことも事実だ。

「いままでやったこともないBtoC市場への参入など無謀だ」「連続で赤字を計上している状態で、派手な発表会を開催して無駄遣いではないのか」「コンセプト製品も、実際に市場に出るまでには時間がかかるだろうし、そもそも製品化できないのではないか」などというものだったが、こういった反応はある程度予測はしていた。

多くの経営の専門家から聞かれた「中小型液晶一本槍では、経営が安定しない」という意見。そのとおりだ。だからこそ私たちは新たな挑戦を始めるのだ。今度は、すると「前例がないのにできるのか」「経験がないことができるとは思えない」と必ず言われる。

これまで私がいくつもの企業で立て直しをやった時にも、「よそ者に何が分かる」「あなたは業界のことが何もわかっていない」と必ず言われてきた。新しいチャンレンジをしようとするときにはつきものだ。そんな時に必ずこう言ってきた。「できるできない」ではない、「やるかやらないか」だと。

ビッグマウスは実現すればビッグマウスではなくなる。本気でやれば多くのことは実現できる。だからこそ私は有言実行を貫くのだ。

8月の戦略発表会のテーマは「First 100 days」であった。その時点で、次の発表会「JDI Future Trip -Creating Beyond-」を、12月4日の100日後に開催すると宣言していた。

これは、これまでのJDIのビジネススピードから考えれば常軌を逸したものだったはずだ。しかし、トップ自らが、姿勢、言動、行動で見せることで、「この人は本気でやろうとしているんだ」ということを示したのだ。

「有言実行」から生まれた「果実」

では、最初の戦略発表会から100日で何が変わり、何が生み出されたか、具体的に挙げてみよう。

8月以降、私たちは、JDIが持つディスプレイ技術を活かすアイデアを発掘するためにアイデアソンを実施した。コクヨ、エイベックス、セブン銀行、ITスタートアップ企業のバスキュールのスタッフとJDIのスタッフによるものだ。それだけでなく、産学連携の一環として鳥取大学や湘南工科大学でのアイデアソンも開催した。

自社のスタッフだけでは思いつかないアイデアが欲しければ、外部とも積極的に連携していく。このような異業種、産学連携でのアイデアソンによって、いままでにないアイデアが生まれてきている。事実、すでにそこからの商品化への取り組みが始まっているものもある。

文=伊藤嘉明

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