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2008年、6人の起業家によって始まったフィンランドのスタートアップイベントSlush(スラッシュ)。起業家と投資家を結ぶ場として誕生した。Slush 2018で注目を集めた3企業とイノベーションを生み出すエコシステムに迫る。


AI、SaaS、フィンテック……。世界中から集まる3100のスタートアップは多岐にわたる。「どの企業に注目すべきか」はSlush参加者の誰もが気になるところだ。率直な質問をサアリにぶつけてみた。するとSlushの現場を見続けてきた彼からすんなりと答えが返ってきた。「CTRL Labs(コントロールラボ)だよ」。

インターネット・エクスプローラーの開発者の1人、トーマス・リアルドンによって立ち上げられた企業だ。タッチ機能でも、音声機能でもなく、私たちの「意図」に沿って機械を制御できるニューラルインターフェース技術を生み出した。リストバンドで電気インパルスを読むことで機能するIntention Captureと呼ばれる技術を開発し、機械が体の神経だけで反応するようになる。


CTRL labの技術について説明するトーマス・リアルドン(photo by JUSSI RATILAINEN)

現状では人間の意図はマウスやキーボードのようなデバイスを通ってアウトプットされる。しかし、デバイスを通すことで人間の能力を十分に発揮できないとリアルドンはいう。デバイスのレベルを上げるのではなく、デバイスなしで機械を動かすことができれば、より大きいアウトプットを生み出せる。これは遠い未来の話ではなく、すぐそこにある技術だ。サンプルキットは、2019年中に配布される予定だ。

コントロールラボ以外にも、注目すべき企業はあった。イベントの初日、ステージで大きく脚光を浴びたのは、「中国のイーロン・マスク」と呼ばれる電気自動車メーカーNIOのウィリアム・リーCEOだ。NIOは、14年に環境問題解決を目指し立ち上がったばかりのスタートアップだが、わずか4年でニューヨーク証券取引所に上場した。


Slush CEOのアンドレアス・サアリと対談するNIO CEOのウィリアム・リー。(photo by SAMI VÄLIKANGAS)

ビジネスをする上でリーが大切にしているのは、ユーザーエクスぺリエンス(UX)だ。UXは、車の速度やパワーなどの設備に関することだけではない。感情にも訴えるものでなければならない、という。

「今、私たちNIOのアプリを使用しているユーザーは約17万人(18年12月時点)。NIOの車を所有している20倍の人が参加しており、すでに大きなコミュニティが構築されています」。リーは誇らしげに語った。コミュニティのメンバーたちと毎日1時間は議論しているようだ。彼の描くコミュニティビジネスはNIOを自動車会社以上の存在にするだろう。

日本でもメディアに取り上げられた、自動運転技術の会社がある。「Sensible 4(センシブルフォー)」だ。18年11月に無印良品と提携し、自動運転バス「ガチャシャトルバス(仮称)」を発表した。20年の実用化を目指す。センシブルフォーの強みは全天候対応の自動運転技術だ。企業名の「4」は4つの季節を表す。極寒の北欧に耐えられるだけでなく、熱帯地方の天候でも利用可能だ。


Sensible 4のテスト運転車。本社が位置するフィンランド・エスポー市のアアルト大学を巡回する。

CEOのハリー・サンタマラによると、「このようなシャトルバスは、現存の公共交通機関にとって代わろうとしているわけではない。電車などが届かない範囲の郊外で私たちの技術は発揮される」とフォーブス ジャパンの独自取材に語った。最初のクライアントは中国企業だった。今後はアジアとヨーロッパを中心に展開していきたいという。実際にSlushのあと、サンタマラは無印良品以外のビジネスパートナーを探しに日本を訪問していた。

文=井土亜梨沙、林 亜季

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