AI通信「こんなとこにも人工知能」

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義手や義足など身体の一部を補完するハードウェアにも、人工知能が搭載されていく流れが生まれつつある。

義足・義手の世界的大手メーカーÖssur(オズール)は、「Proprio Foot」という最先端のバイオニクス技術が採用された義足のアップグレードバージョンを公開した。

ホームページに掲載された解説によれば、同義足には世界で初めてマイクロプロセッサが搭載されたという。関連発表を受けて、一部海外メディアは義足の主要な動作に人工知能が関与するようになった特筆すべき事例と評価している。

義足を着用した身体は、しばしば「基礎部分が弱い建物」に例えられる。いかにクオリティーが高い義足であっても、実際の足で立つよりは転倒の確率が高い。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究グループが行った調査によれば、「1年間に一度でも転倒したことがある」と答えた義足着用者は、実に半数以上にものぼったそうだ。

Proprio Footは、ソフトウェアがユーザーの歩行パターンや地形の変化を素早く認識。従来モデルよりも、高速で反応するよう設計されたという。転倒防止はもちろん、階段や丘など様々な環境でもより自然に歩くことができるというのがオズール社の説明だ。

テストに参加した同社の関係者は、人工知能システムを取り入れることで解剖学的により本物の足に近づいており、着用者が転倒する回数が70%減少したとも強調している。



オズールの新製品の話に触れ、過去に日本のAI学会関係者とした話が頭をよぎった。人間と賢くなる機械の関係性の未来についてだ。

「仕事が奪われるなど、人工知能と人間は対立軸で語られることが多いですが、それらの話題は人間側の発展や進化を無視している。人間の身体の一部に人工知能が埋め込まれ、人間の力がより拡張していくというシナリオだって充分ありえます。つまり、敵対するのではなく“共進化”です」(AI学会関係者)

オズールの新製品の話題は単なる義足や義手の「バージョンアップ」という話に留まらず、「人間が人工知能を埋め込んだ最初の事例」と言ってしまうと少し大袈裟だろうか。いずれにせよ、五感など身体的感覚まで含む、人間と機械の総合的な知能の融合が刻一刻と進んでいることだけは確かなようだ。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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