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スズキユウリ氏(写真提供=Pentagram)

2019年1月、ビジネスコミュニケーションツール「Slack」のロゴが刷新されたことが話題となった。従来のプラットフォームごとに変わるデザインから、ブランドイメージを統一するために一貫したシンプルなデザインへと変わり、驚いた人も多いだろう。そのリニュアールを手がけたのは世界的なデザイン事務所、Pentagram(ペンタグラム)だ。

同社はロンドン、ニューヨーク、オースティン、ベルリンにオフィスを構え、世界で選抜されたパートナーだけが所属できる老舗のデザイン事務所。手がける領域はグラフィックやブランドアイデンティティ、企業のロゴ、建築、インテリア、展示会やインスタレーションなど幅広い。MITメディアラボやマイクロソフトなど、ペンタグラムの提供する唯一無二のデザインに惚れ込んだ有名クライアントがこぞって彼らに依頼する。

そんな世界的なデザイン事務所に2018年11月、1人の日本人が所属することになった。サウンドデザイナー、インスタレーションデザイナーとして活躍する、スズキユウリである。彼は東京でインダストリアルデザインを学んだのちに芸術ユニット・明和電機でキャリアをスタートさせ、現在はロンドンを拠点に活動している。

今回は彼がジョインすることになった経緯、世界でも類を見ないペンタグラムのユニークさ、そして巷でトレンドになっている「デザイン思考」に対する考えを語ってもらった。

世界に散らばる23人の意思で動く、ペンタグラム

──ペンタグラムのパートナーとして唯一の日本人ですが、ジョインの話が来たときはどう思いました?

ペンタグラムの変遷をすこしお話しすると、初期は建築、プロダクト、グラフィック、全部をカバーするような会社で、ここ十数年間はグラフィックデザインが中心でした。

しかし、世界的にもデザインやビジネスの考え方が変わってきています。そこでペンタグラムとしても新しい分野を切り開くデザイナーを探しているところでした。だから今回、ペンタグラムに加入する話が僕にきたのだと思います。

最初は「なんで僕のところに?」と疑問でしたよ(笑)。他にも成功しているデザイナーは山のようにいますから。でも、声をかけてもらえたのならチャレンジしたいと思ったんです。

けれども、ペンタグラムのパートナーになるためには2年間かかりました。年月をかけて、世界中に散らばる20人以上のパートナー1人ずつと実際に会って、会話をすることが必須なのです。コミュニケーションやスキルの相性をここまで擦り合わせる会社はそうないと思います。


ルクセンブルク・ジャン大公現代美術館のコミッションで制作されたインスタレーション「ルックス・ライク・ミュージック」。黒い線上を走りながら、色や図形を読み取ることで音を奏でていく。

──スズキさん以外にもサウンドデザイナーの方はいるのでしょうか?

音を軸にしているのは僕だけですね。他のパートナーはグラフィック、建築、プロダクトなど、中にはコピーライターもいます。色んな領域のパートナーと信頼し、協力し合うのがペンタグラムの強みだと思います。

もう一つペンタグラムのユニークな部分は、独立した組織体系です。デザイン会社は大企業から資金提供を受けるのが一般的ですが、ペンタグラムは外部からの出資を受けていないのでバックでコントロールする会社がいないのです。さらには社長も存在しない。世界に散らばっている23人のパートナー全員が会社の責任を負っているんです。

だから大きい会社のオピニオンで動かずに、23人のパートナーの決断で会社が動きます。これは世界でも類を見ないユニークな組織体系だと思います。

構成=田中一成

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