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──どんな中学時代だったのでしょうか?

慶應の付属中学に入りました。同級生みんなで「自分たちは勝ち組だ」みたいな勘違いをしていたりして、一瞬だけ面白かったです(笑)。でも1年くらい経ったら、びっくりするぐらい飽きてしまいました。みんな賢くて頭の回転が速いんだけど、生活環境が近い人たちの集まりだったから思考回路が似てきたんだと思います。

中学1年の終わりに「これがあと5年続くのはきついぞ」と気づいて、2年生の頃は本当に苦しかった。暗いどん底から少しずつ上がって行く感覚で、3年生のときから少しずつ学校以外の人たちと会うようになっていきました。

そのうちに色々なコミュニティと出会う中で、自分の中で「外に出る」方法を見つけた気がしたんです。大人が集まっていて、私を受け入れてくれるところがあるんだ、って。



──どういったコミュニティに入っていったのでしょう?

たとえばピースボートとか、海外に行こうとしている人たちのコミュニティですね。こうやって生きるのもいいなと思える大人と知り合って、ずいぶん救われました。学校をやめても生きていく術がいっぱいあるんだって、そのとき教わったんです。

あと、農業との出会いもあった。海外に行く人たちと畑に興味がある人たちってコミュニティが重なっていて、ピースボート経由で農業をやっている人に出会って興味を持ったんです。

──農作業ですか?

そう。自分が生きていけるだけの野菜をつくって生きていくことって、思ったより楽しいなと思いました。もし自分の畑で野菜が取れなくなっても、他の農家さんとのつながりで、形が悪くて売れない野菜などを譲ってもらえることもある。そうわかったら、生きるのが楽になりました。

サラリーマンとしてお金を稼がなくても、おいしいものを食べて生活することはできるし、土が身近にある生活って意外に気持ちがいいなって。

野菜が土から出てくる瞬間って美しくて、にんじんって最初は透けているって知っていました? 根っこだから、「たった今まで水を吸ってました!」みたいに、ツヤツヤツヤ〜ってしてて。空気に触れてしばらく経つと、途端にこの世のものっぽく表面が乾くんですけど。

自然はテクスチャーだらけ。ファームステイをする中高生がもっと増えればいいのにと思います。ちなみに私がお世話になったのは、茨城の「やさと農場」というところでした。

──自然と触れ合う体験って、情報の量も質もすごいんですよね。それは都会で暮らしているからこそわかることかもしれません。

そうなんですよね。今の私の頭のなかは都会にまつわることでいっぱいだけど、「畑で生きる」っていうオプションは常にあって、いざとなったらそっちの世界で生きることもできるって思うから、いま遊ベるんです。

「お金を稼ぐ」ことが切迫したものになるといけない。現代の都会で明るく生きていくためには、そういう切迫感をなくすことが必要なんです。『WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)』っていう、働いてもお金はもらえないけど寝床と食べ物はもらえるっていう仕組みとか、若い人にはめっちゃいいと思う。

畑でなくても、人生にオプションがあるときってがんばれる。私にとって、農作業をして暮らすのはユートピアのイメージなんです。結局、私は都会の文化もすきだし、ダンスミュージックとか、蛍光色でバキバキなものも欲しいなと思って一カ月くらいで都会に戻りましたが、なにかあったらいつでも戻ることができる場所があるのは心の余裕に繋がります。

文=長嶋太陽 写真=小田駿一

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