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数々の受賞歴をもつ、国際的なデザインコンサルティング会社

JAXA/IDEO「Future Blue Sky」

昨今IDEO Tokyoに寄せられる相談は、「未来の人と乗り物の関係」「未来の銀行のあり方」「未来のスキンケア体験」など、数十年先の未来をデザインするお題が急増している。

これほど変化が速く、価値観が多様化する社会においては、従来のやり方で未来を「予測」することは困難だし、「正解」も存在しない。ではそうしたお題に、どんなアプローチをしていくのか。

今回、IDEOと宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共に「人間中心のアプローチ」を用いて、「未来の空」をデザインした事例を、IDEO Tokyoのビジネスデザイナー、森智也が紹介する。


空が「生活の場」になると、私たちの日常はどう変わるのだろうか。

この問いに対して、IDEOは、JAXAの航空技術部門の有志メンバーと共同で、プロジェクト「Future Blue Sky」を進めてきた。「環境・移動・資源・コミュニティ」という4つの観点から、最先端技術を使って人々の生活を改善するシナリオを、昨年11月21日に公開している。



私はIDEOに入社する前、宇宙スタートアップで月面開発の事業化に取り組んでいた。IDEO入社後、たまたま最初に手伝うことになったのがこのプロジェクトのローンチで、JAXAと仕事ができることに興奮した。しかし同時に、当初は違和感も覚えていた。

いま日本企業でも取り入れられるようになったデザイン思考は、対象の分野内外からインスピレーションを取り入れ、スピード感を持ってクリエイティブなアイデアを形にすることを目指しているアプローチだ。これに対して、JAXAなどの研究開発機関は、長い時は数十年をかけて、じっくりとアイデアを形にしていく。双方が取るアプローチは相性が悪いのではないかと、疑問を抱いてしまったのだ。

しかしそんな疑問も、プロジェクトについて理解を深めていくうち、すぐに解消された。

確かに、膨大な予算が動く航空技術の研究について、小さなプロトタイプを繰り返しながらアジャイル開発、というわけにはいかない。しかし、研究が始まる以前のビジョン作成の段階で、デザイン思考を取り入れ、実際に生活する人々の潜在的なニーズに焦点を当てることから始めれば、技術が役立つ意外なシーンや、その技術のもとに成り立つ人間中心の社会像が見えてくる。そこから新たな研究の種が生まれることもあると思えたからだ。

技術よりも「人」を中心に未来を描く

宇宙産業に限らず、技術を起点に未来を想像すると、どうしても現代社会の延長線上にある世界しか描けないことが多い。

その点、JAXAは今回のプロジェクトを立ち上げるにあたって、「本来、技術は人のためにある。人の役に立つ技術のあり方を問い、人がワクワクする未来を描きたい」という強い意志を持っていた。

そこで我々はまず、技術にはこだわらず、「空」に対する固定概念を取り払うことからスタートした。

例えば、デザインリサーチと呼ばれる、人を深く観察することからインスピレーションを得るフェーズでは、「生活の場」としての空の可能性を探るべく、「新しい働き方」をテーマとする事業プロデューサーから高層ビルマニアまで、様々な分野の人との対話を重ねた。

文=森 智也(ビジネスデザイナー)

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