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イラストレーション=アダム・クラフト

2018年12月10日、東京・恵比寿ガーデンプレイス。全国から集まった7人の経営者が壇上に登った。彼らの視界にはびっしり席を埋めた200人超の観客。ホールの後ろには立ち見客の姿も見える。

「スモール・ジャイアンツ アワード2019」。グランプリは、会場に集まった聴衆と16組のアドバイザリーボードによって選ばれる。登壇者のピッチをひと言も聴き漏らすまいと、いま、静寂のなかでステージに注がれる熱い視線とは何なのか。その理由の在り処をたどってみよう。


編集部で「大企業とか中小企業と規模だけで企業を括るのはおかしいのでは?」という議論が始まったのは、2017年夏のことだ。

全国の中小企業を取材すると、大きな売り上げを誇っていなくとも、大企業とは異なる価値や影響力を創出している会社があることを実感する。高度な専門技術や海外との密接なつながり、地域への雇用の貢献、ユニークなビジネスモデル。それらが源泉となって、個性豊かな経営者たちが小さい規模でも大きな影響力を発揮している。未来の到来を予感させる取り組みは、実は多い。

「大企業」といわれる会社の倒産も珍しくない時代だ。売り上げや利益、社員数という、規模のものさしだけで会社の価値を測ることはできないのではないか。

そこで私たちは、売り上げ100億円以下、創業10年以上で、地域への貢献、価値の創出、持続性を考えた取り組み、独自のネットワークの構築など、小さいけれど大きな可能性を秘めた企業を「スモール・ジャイアンツ」と定義した。

まだ世に知られていない「小さな巨人」の発掘プロジェクトは、こうしてスタートしたのである。

「嫌々ながら」経営者に

取材を開始してすぐに面白いことに気づいた。「事業を継ぐつもりはまったくなかった」と話す2代目社長が多いのだ。

「むしろ、それこそが成功する中小企業経営者に共通する傾向だ」と言うのは、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄である。中小企業の経営者たちと話す機会の多い入山はこう説明する。

「父親への反発心から異業種に就職したり、自分で会社を立ち上げたりすることで、結果的に多様な世界を経験して知見を広げる『知の探索』となる。それが血肉になって、家業を継いだ後の飛躍につながるのです」

山野千枝が提唱する「ベンチャー型事業承継」が、その典型だろう。

編集部は、入山や山野のように各地の中小企業とフェイス・トゥ・フェイスで付き合いのある人や組織にアドバイザリーボードを依頼。250社を推薦してもらい、そこから精査・厳選していくと、まさに「父親への反発」「知の探索」「ベンチャー型事業承継」を体現し、成功した企業があった。それが、第1回「スモール・ジャイアンツ アワード」でグランプリとなったミツフジである。

2018年2月24日発売号の本誌でミツフジのルポを掲載すると、予想外の反響があった。

ミツフジは5年前まで倒産の危機に瀕していたが、先代が育てた銀メッキ繊維を応用してIoTウェア「hamon」を開発。布そのものがセンサとなり、ウェアが肌に密着しなくても正確な生体データを取得できる。同製品は、NBAのプロバスケットボールチームなど世界から注文が殺到している。

衰退産業であった繊維の技術を、先端分野に転用したミツフジの企業ストーリーは、親子の対立など、取材をする編集部側もそのドラマチックな展開に驚きの連続だった。

その後、ミツフジはテレビ番組『ガイアの夜明け』で密着ドキュメントが取り上げられるなど、スモール・ジャイアンツの発掘プロジェクトに意義があることを確信させてくれた。

文=野口直希

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