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日本人が知らないエストニアのいま


リリース直後は「ファイヤーファイター」だった

e-Residencyがローンチされたのは、2014年12月。しかし、リリース直後はカードの不具合があったり、ユーザーが何度もエストニアに足を運ぶ必要があったりと、トラブル続きだったという。アダム曰く「ファイヤーファイター(消防士)のように火消し作業に追われていた」状態で、一つ問題が解決したらまた別の問題が噴出する有様だったと振り返る。

それでも、スタートアップのように軌道修正を繰り返しながら活動してきた同チーム。「世界初」という元々の話題性の高さに加えて、同国を訪れた政府要人にe-Residencyカードを贈るなどのプロモーション政策が功を奏し、応募者数は年100%以上の成長率を記録した。同国への経済効果も17.8Mユーロ(約23.1億円)と、非常に大きなインパクトをもたらしている。

それから、アダムは少しトーンを変えてこう語った。「e-Residencyがスタートアップのように活動する時期は終わったんだ。これからのe-Residencyは第2章に突入する」


オフィスに掲げられたe-Residencyのロゴ

エストニア大統領がe-Residency2.0を発表

2018年12月、エストニアのカリユライド大統領が「e-Residency2.0」を発表した。この計画は、e-Residencyの安全性、有益性、利便性を更に充実させるための、49の指針によって構成されている。

その内容としては、『エストニアの政府観光局と連携し、エストニアの主要イベントの情報を継続的にe-Residencyに提供する』、『エストニアの名産品を国外に輸出できるようなマーケットプレイスをe-Residencyウェブサイト上に整備する』、『より多くの女性起業家をe-Residencyコミュニティに誘致する』、『現地在住のローカルに質問できるようなQ&Aプラットフォームを整備する』などが例として挙げられる。

何より、これからのe-Residencyはビジネス面のみならず、文化面でもエストニア内外に大きなインパクトを残していきたいという。

「これからは、エストニアに住んでいるエストニア人、エストニア国外に住んでいるエストニア人は勿論のこと、エストニアに住んでいる外国出身者、そして電子国民を含めた『全てのエストニア人』に恩恵があるようなプログラムにしていきたい」と、アダムはその計画のコアコンセプトを語ってくれた。
   
2019年からは、これまでボトルネックだった銀行口座の規制も緩和され、より多くの電子国民、そして起業家が誕生することが期待されるe-Residency。次回記事では、そんな同プログラムが世界中に認知されるまでに至った「マーケティング戦略」に焦点を当て、切り込んでいく。

連載 : 日本人が知らないエストニアのいま
過去記事はこちら>>

文=齋藤アレックス剛太

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