元新聞記者のダイバーシティ・レポート


技術があれば収益率も高い

ネイルサロンを始めた岩瀬さんには、どんなきっかけがあったのでしょうか。会社勤めや留学を経て、難民を支援する団体の人たちに出会って話すうち、「ネイルを難民の仕事にしては。日本の技術は世界一だから」とひらめいたそうです。

岩瀬さん自身、香港やアメリカのネイルサロンに行くと、言葉は通じなくてもコミュニケーションできたので、「技術が大事」と痛感。日本でも従来のマニキュアよりすぐ乾いて、はげにくいジェルネイルが人気でした。

「美容業は収益率が高く、ネイルは初期投資がそれほどかかりません。ネイルケアを始めるとお客さんは定期的に通うようになります。私自身がネイルスクールで学び、別事業を主とする会社を作って2010年にサロンを始めました」

難民の1期生には、岩瀬さん自身が教えました。3カ月の研修後、難民を含む3人の外国人がデビュー。

「皆さん、数年は働きました。お客さんに助けられましたね。簡単な施術で2時間かかっても温かく応援してくれて。他にも何人かネイリストがいましたが、結婚したり、体を壊したり、継続は厳しかったようです。都心に移転したらお客さんに求められるクオリティも上がりました。今、ネイリストとして働いている難民はノンノンさんだけです」

岩瀬さんの研修は無料でした。「外国人の希望者を受け入れるのは難しかったです。『時間厳守』の意味がわからない人もいました。やりたい人がいたら教えてきましたが、ついてこられる人が少なかった。向き不向きもあります。今は、あえて募集はしていません。日本語を学べるところや、外国人を雇いたい社長さんを紹介するなどコーディネートはしています」

「適性・努力・ガッツも必要」

サロンは都心にありながら、料金は税別で3千円からとお手頃な価格。ノンノンさんの技術と人柄にリピーターが多く、10代から80代まで毎月100人以上のお客さんがいて、経営が成り立っているそうです。他にこのサロンでは、難民に限らずDV被害者や養護施設の中高生に職場体験の機会を作り、社会に出るトレーニングの一つとして受け入れています。

筆者がノンノンさんに塗ってもらったジェルは、時間が経ってもきれいです。適性があり、努力してきたから売れっ子ネイリストとして活躍しているのだと納得しました。外国人労働者の受け入れ拡大の報道について、岩瀬さんは「受け入れはいいと思います。でも、人によるのではないでしょうか」と指摘します。

「厳しいかもしれませんが、やりたい仕事をするには努力がいる。その人の能力を生かし、『ゼロからやってやる!』とのし上がればいい。例えば介護の仕事をしながら日本語の勉強をして、わからないことは施設の人に聞く。スマホを持っている外国人は多いので、教材も見られるでしょう。日本で働こうとするなら、ガッツも必要です」

現場で寄り添ってきた岩瀬さんの言葉と、ノンノンさんの働く姿勢は、受け入れを様々な方向から考えるきっかけになると思います。

文=なかのかおり

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