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1号店オープンから2年8カ月後、17年6月にオープンした7店舗目は、“卓球の複合施設”を目指した事業。それが渋谷の「T4 TOKYO」だ。


レストラン、ショップを併設した渋谷の複合型施設「T4 TOKYO」

レストランをつくり、そのスペースの真ん中にネットに囲まれた卓球台が鎮座する。地下のVIPルームは、貸し切りにすれば、2台の卓球台のうち1台にテーブルクロスをかけ、そこに料理やお酒を並べつつ、隣の台で卓球を楽しむことができる。

また、T4にはスヴェンソンが11年に立ち上げた卓球ブランド「VICTAS」の専門ショップも併設した。VICTASは、現在の男子日本代表のユニフォームも手掛けている。佐藤は狙いをこう話す。

「これまでの卓球メーカーは小売店に卸すことしかしてこなかった。ブランドを広く認知してもらうためにも、ナイキとかアディダスのように路面店をつくって、自社のブランドを自社で磨いていくということをしていきたかったんです」

ただ、新たな試みは、新たな問題を引き起こした。客層の開拓には成功したが、スタッフの心がタクティブから離れていってしまったのだ。

「渋谷店は、いちばん辞めるスタッフが多かった。レストランとかショップを併設したことで、卓球を教えること以外のストレスが大きくなってしまったのかも。会社が急速に成長しようとするとき、自分の意志が伝わり切らず、どうしても歪みが生じてしまう。そこは大きな失敗でした」

そのころ、佐藤が兒玉に助言を求めると、直接コミュニケーションをとることの大事さを説かれた。スヴェンソンでは年2回、全体ミーティングを開催している。今年も約800人の社員を品川プリンスホテルに集め、会長自ら短期目標、5年後の目標などを1時間にわたって語った。佐藤が言う。

「会長のそばにいると熱が移って、無理かなと思っていても絶対できるに変わる。若いとスキルに走りがちなんですけど、人を動かすのは人。会長のようにこの仕事の大儀はどこにあるのか、それを熱意とともに伝えていくことが大事なんだと思った」

タクティブの将来を見据え、兒玉は佐藤に大きな宿題を与えている。

「ある程度、全国に出店したら、次はアメリカだと。アメリカは知られざる卓球ブームなんですよ。うちがアメリカに進出したら大成功しますよ。本当は3、4年のうちにやって欲しいんですけどね」

佐藤も止まるつもりはない。

「会長がずっと走り続けている方なので、こちらもワクワクしてくる。僕も従業員をワクワクさせるために新しいことにどんどんチャレンジしていかないと。スタッフに15店舗、20店舗になったときを想像してみろ、とよく言うんです。君がアメリカの支店長になってるかもしれないよ、と」

その横で、兒玉は、佐藤をさらにこうけしかけた。

「僕は常に言ってるんです。遅い、遅いって」

その言葉を佐藤は「微笑み」で受け止めた。


兒玉圭司◎1935年生まれ。スヴェンソン代表取締役会長。明治大学経営学部を卒業後、84年にスヴェンソンを創業。学生時代から卓球選手として活躍し、56年には世界卓球選手権大会シングルスベスト16に進出。長年にわたり指導者として活躍。元日本代表選手団監督。現明治大学体育会卓球部総監督。

佐藤司◎1984年生まれ。明治大学経営学部に在学中、卓球部に所属。2014年タクティブを設立し、翌年代表取締役社長に就任した。早稲田大学大学院で書いた論文「卓球初心者向け25段階の基本技術習得目標に関する研究」で優秀論文賞受賞。18年からは、スヴェンソンスポーツマーケティングの取締役も務める。

文=中村計 写真=前康輔

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