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緊急対策として「任期付職員」制度を活用

事件があったのは3月だが、世論、そして政治、行政が大きく動いたのは、反省文が公表された6月以降である。6月21日には東京都が児童虐待防止に向けたプロジェクトチームを発足。会合を重ね、9月14日に「児童相談体制の強化に向けた緊急対策」として案をまとめて発表した。

このなかで、すぐにでも取り組めるものとして、冒頭のように任期付で児童福祉司を新たに13人、今年度中に採用する運びとなった。

「任期付職員」とは、都政の喫緊の課題を解決するために、専門的な知識や経験を持つ人材を都庁の外部から登用し、一定期間活用する制度。一般職の地方公務員であることに変わりはないが、任期は最長5年である。

特徴は、その応募条件を見れば分かるが、大学・大学院卒業でも福祉に関する職務経験が5年以上必要(学歴により必要な経験年数は異なる)と、とにかく「即戦力」として求められるところにある。

児童相談所という虐待対応の最前線に放り込まれて、困難を抱える親子に対応する職務を遂行していくには、肉体的にも精神的にもタフさが求められる。キャリアや経験のない人を採用して育成することも大切だが、虐待についてある程度知識も経験もあり、すぐに動ける人材は、現場ではとても貴重だ。実際、児童養護施設や母子支援施設などの福祉の職場を経験して、児童福祉司となる人は多い。

しかし気になるのは、せっかく児相で児童福祉司として働いてキャリアを積んでも、任期が満了した際には辞めなければならないのかという点だ。それはあまりにもったいない。

東京都保健福祉局の職員課に問い合わせたところ、「任期付であっても地方公務員であるので、最長5年の任期が切れた後は、『キャリア活用採用』の選考を経て、引き続き働いてもらうことができます。児童福祉司としての採用なので、他の児童相談所への異動はあっても、都の他部署への異動などはありません」という答えが返ってきた。

つまり任期が満了しても、経験者採用枠の選考試験に通れば、児童福祉司として働くことができる。そしてこれは、任期に定めはない。

2022年度までに児童福祉司2000人の増員計画

7月20日。国は児相の児童福祉司を、2022年度までにいまより2000人程増やす新プランを策定した。児相は全国に210カ所あるから、単純に割っても、1カ所に9.5人の増員だ。もちろん人口比率を鑑みて、それぞれの児相ごとにもっと配置が多い、少ないあるだろうが、この2000人という数字を見たときに私がまっさきに思ったのが、「そんなに集まるのか」だった。

いまでさえ東京都の児童福祉司は配置基準に対して98人足りていない。全国の児相のなかには1人が100ケース以上担当しているところもあり、児童福祉司不足は深刻な問題となっている。しかも、児童虐待死事件が起きれば必ず、「児童相談所はなにをしていたんだ」と激しいバッシングが起こる。ただでさえ成り手のいないところ、なりたいと思う人はさらにいなくなる。

児童虐待対応の最前線で日々、困難を抱えた親子と向き合うのは、想像以上にたいへんだ。子どもを思う気持ちはあっても、ケースに忙殺され、心身ともに疲弊して潰れていく人も後を絶たない。

文=矢嶋桃子

レビデルマツダ
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