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公務員イノベーター列伝


自ら制作した動画は15万回以上の再生

震災が少し落ち着いた頃に、復興支援の取り組みのひとつとして、野中は自らが撮影から編集まで手がけた、震災に関するドキュメントムービーをつくった。自前で制作したことから、費用は動画編集ソフトのライセンス料しかかっていない。

8分ほどの動画のなかでは、被災状況を伝える映像は極力減らし、被災地に寄り添い、後押しができるような構成を心がけた。動画には1000人を超える市民や支援者が登場し、復興に向け、「負けんばい、熊本!」を発する前向きな表情が映し出されている。もちろん、菊池市をサポートしてくれた全国の支援者に感謝の意を示すことも忘れなかった。

震災から半年後の11月には動画は完成していたが、まだ震災から立ち直れていない市民も多かったため、野中は公開の時期を冷静に見定めた。年明け以降、復興に向けたポジティブな空気が広がるのを実感すると、地震への関心が高まる阪神・淡路大震災(1995年)が発生した1月17日に動画を公開することを決めた。

公開には一抹の不安もあったが、「前向きになれる映像をありがとう」「忘れないことの大切さを知りました」といったポジティブなコメントが寄せられ、野中はほっと胸をなでおろした。動画は大きな反響を呼び、市民はもとより県外の公的団体や民間企業からも研修やイベントでの上映依頼が殺到した。マスメディアにも紹介され、動画は15万回以上再生されている。

「税金泥棒」はラクではない

野中には「ひそかな野望」と称するものがある。それは公務員の本当の魅力が理解されたうえで、なりたい職業の上位にランクされるというものだ。いまでも公務員は人気職業の筆頭にあがるが、その理由として「ラク」や「安定」というものが多くを占めることを、野中は好ましく思っていない。

公務員の仕事について、野中の印象的な言葉がある。

「『税金泥棒』なんて言われることもありますが、思っているよりラクではない『泥棒』ですよ(笑)。ただ、公務員は人の幸せのために働くことができ、結果的にそれが自分の幸せにもつながるとても恵まれた仕事です」

野中の高い志がその言葉に凝縮されていた。

連載 : 公務員イノベーター列伝
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文=加藤年紀

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