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公務員イノベーター列伝


すると、次の瞬間、待っていたのは、いつもの罵声ではなく、佐々木の不安を安堵と歓喜へと変える万雷の拍手であった。会議の後、「絶対文句を言ってやろうと思っていたけど、佐々木さんの熱意に負けたよ」と、こっそり耳打ちする者もいた。

町会連合会の結果、次年度に弘前市と自治会関係者が柔軟に話し合うことのできる、地域コミュニティ強化を目的としたプロジェクトチームが発足する。弘前市と自治会関係者が協力して施策を実行に移すとともに、新たに自治会への加入者も生まれた。それぞれの関係者が課題に対して前向きに挑戦する機運が高まっていった。

「公務員への信頼」は存在する

若手の自治体職員が活躍するには高い壁があると言われる。佐々木の一連の活動には、その壁を乗り越えるヒントが詰まっているが、その最たるものは地域住民との密度濃い接触である。

佐々木は業務時間だけでなく、プライベートの時間でも地域住民と触れあい、生の声を聞く努力を怠らない。地域の課題は現場に存在し、ニーズも現場で発見される。なにより職員が地域に出向いて行くことで、行政と住民はお互いの心を深く通わすことができるようになる。

公務員は批判の矢面に立つことも多いが、そこには住民からの熱い信頼も存在する。公務員だから話をしてくれる、聞いてくれるという住民は、思いのほか多い。実際、佐々木は、「公務員の名刺は『魔法のカード』」と笑顔で語る。

もちろん、「公務員への信頼」は、自治体のバランスシートに、目に見える資産として記されているわけではない。しかし、それは間違いなく存在し、若手であっても等しく活用することのできる、貴重な資産なのである。

連載:公務員イノベーター列伝
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文=加藤年紀

デルマツダ
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