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Forbes JAPAN 編集部 編集長


個別の工場や機械に対応するソフトを開発すれば、コストは増大する。スマホのアプリの発想で工場そのものを賢くする。部分最適から全体最適を目指したものであり、「競争前」技術の共有化でもある。

「例えば、刃物など切削を扱ってきたパートナー企業が、最適な切削条件や刃物が磨耗する交換時期をフィールドシステムを通してお客さんに伝え、最適な使い方を提供します。もっとも生産効率が上がる仕組みを構築できるのです」

生涯保守で、未来を読む

ファナックは、各メーカーやソフトウェア企業が開発したアプリを認証する立場にある。アップルに音楽ビジネスや著作権、コンテンツの知見がなければスマホが成立しなかったように、オープンプラットフォームの要諦は、ただ「開いて」「つなぐ」だけではなく、各製造現場が求める技術を熟知できている点にあるのではないだろうか。それはファナックが独自の時間軸をもっていることが背景にある。稲葉がこう話す。

「創業以来の思想ですが、お客様が使っている40年前のユニットをいまでも修理します。例えば、半導体部品は簡単に生産終了になってしまうので、急に古い半導体を手に入れようと思ってもできません。サプライヤーが部品の生産を終了する時点で、30年から40年の需要予測を立ててストックしているのです」

人間は世代交代するが、技術は生き続ける。エンジニアが退職しても、修理のノウハウをデータ化してあるため、若い世代でも修理ができる。顧客が機械を使っている限り、保守を続ける「生涯保守」と稲葉は言う。寄り添うことで、製造現場が何を必要としてくるか未来が見えると言えるだろう。ファナックが中期経営計画を立てない理由もこう言う。

「3年とか5年先のことは頭に入れていません。目先のことでこの世界を見ようとしたら、必ずロングレンジの計画を後回しにしてしまいます。100年、200年、それ以上に企業が生き延びるにはどうしたらいいかを考えているのです」


ファナックはインドにも製造拠点を持ち、アームロボットなど工業機器をスリランカやネパールなど周辺の国々へ展開している。


いなば・よしはる◎1948年生まれ。茨城県出身。73年東京工業大学工学部機械工学科卒、いすゞ自動車入社。83年同社を退職し、ファナック入社。92年より常務、専務、副社長、社長などを経て2016年から現職。東京大学工学博士号取得。ベンチャー企業との積極的な協業や、「サービスファースト」「生涯保守」など顧客と現場に密着した事業を展開。世界的な企業とパートナーを組み業績を伸ばしている。

文=藤吉雅春

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